カナダ・トロントの中心部にそびえたつ、黒くスタイリッシュなフォルムは明かに他のビルとは異なる存在感があります。
今回は近代建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエが手掛けたドミニオン・センターのご紹介です。
現在、在トロント日本国領事館も入居するこの建築にお世話になる方は多いかと思います。
ちなみに、日本領事館はトロント市庁舎(Toronto City Hall)内ではなく、こちらです。
TD North Towerの33階にあります。
パスポートの再発行や運転免許の書き換えの際にお世話になることと思います。
付近には日本領事館についての分かりやすい看板などは見当たらないので、迷子にならないようにご注意ください。
私は初めて訪れた時に迷子になり、ウロウロしました笑
記録も兼ねて、行き方ものせておきます。
日本領事館への行き方をリサーチ中の方は目次からこの記事の最後に飛んでください。
この建築について興味を持たれた方はこのままお楽しみください。
いつものようにこの建築の場所はこの記事の最後に地図を貼っています。
それでは行ってみよう!
ドミニオン・センターの概要
現地には案内板が設置されています。これによると
トロントの金融地区の中心に位置しており、建築群は花崗岩で舗装された広場と3棟の建築が配置されている。花崗岩で舗装された歩行者空間の地下にはショッピングコンコースがある。建物は青銅色のガラスと黒色塗装のスチールで覆われた鉄骨造で外側に鉄製のI-beam(I字形鉄鋼)マリオンが取り付けられている。トロントの街並みを変え、多くの建物に影響を与えた。
とのことです。
3棟の建築とは
- Toronto-Dominion Bank Tower[1967] 56階建て(現TD Bank Tower)
- Banking Pavilion[1968] 平屋
- Royal Trust Tower[1969] 46階建て(現TD North tower)
とのことです。
建設当時の図面をもとにグランドレベルの配置イメージを描いてみました。
3棟の建築の間にプラザが配置されています。
現在、地下にはフードコートをはじめとする商業施設が並んでいます。
また、地下を通して他のビルの地下とつながっているため、ユニオン駅から歩いて移動してくることが可能です。冬は本当に助かります。
文献による補足
もう少し詳しく知りたかったので、トロント・リファレンス図書館で調査してみました。
得た情報を要約すると、当初計画されたのは2棟の高層ビルと平屋のパピリオン棟です。
のちに、このエリアにさらにいくつかの高層ビルが建設されます。
現在は6棟の高層ビルと平屋のパピリオン棟、地下の商業施設から構成されており、これらは地下でつながっています。
建設当時のトロントには50階を超える高層ビルは皆無だったため、この存在感といったらなかったと思われます。
過去の街並みを映した写真を見てみてもこの点は容易に想像がつきます。
実際、建設当時、TD Bank Towerはカナダで最も高い建築だったようです。
ドミニオン・センターが成功し、それ以降の高層ビルの建設ラッシュがトロントの中心部のスカイラインを一変させたという意味で、この建築が果たした役割は大きいと言えます。
(その後、トロントのダウンタウンでは大手銀行がこぞって、TDに対抗すべく自社ビルを建設しました。現在もそのいくつかを見ることができます。)
また、ミースの最後の建築という意味でもミース建築の集大成を見ることができます。
外側に取り付けられてるI-beam( I字形鉄鋼)は鉄骨造の根本的な構成要素であって、壁を補強する構造的な意味合いを持っています。
建築のトップからボトムまで一直線に通っているのを見ることができます。
この形状であることで、マリオンと柱の間をぼかす効果もあり、また、いくつかのマリオンの陰に間仕切りが隠れるようにデザインされているようです。
今回参考にした書籍はこちら。一応載せておきます。ご興味のある方はぜひ。
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実際に現地に行ってみた
これらをふまえて、改めて現地へ行ってみました。撮影してきた写真と共に見てみましょう!
真っ直ぐ上空にのびるスタイリッシュなフォルムが美しいですね。1階のピロティのお陰で建築全体が重そうに見えないように工夫されています。
ピロティが印象的ですね。モダニズム建築の基本がきちんと反映されています。
この画像の左手前側が当初Plazaとして計画されたゾーン。この記事冒頭の案内板もここに設置されています。
ファザードのディティールをよく見てみると、やはりI字鋼がマリオンとして使用されていることが確認できます。
黒塗りがかっこいい。
歩いている人と比較するとスケールの大きさが分かります。エントランスのある1階の天井高は異様に高いです。これにより解放感が生まれています。
外周からセットバックしていることにより、ピロティが生まれモダニズムの特徴が反映されています。
残念だと感じる点
漆黒に輝くビル群は何とも洗練された印象を受けますが、実は同じフォルムの建築がお隣アメリカ合衆国にあるんだそうですね。アメリカ・シカゴとにも同じくミースの手掛けたビルが建っています。んーたしかに。均一化ですね。
そして、ここは決して分かりやすい空間ではありません。これも均一化の弊害でしょうか。また、看板等のサインもよく分からないのは大きな問題だと感じます。
80年代ではあまり概念がなかったのかもしれませんが、そろそろ改修の時期に差し掛かってきているのかもしれないと個人的には感じました。
トロント中心部の地下街はPATHと呼ばれ、厳しい冬にはとても便利ではありますが、空間としてはまさに巨大迷路を彷彿とさせます。
ワーホリで来ている人はこれを攻略せずに日本には帰れませんね()
在トロント日本国領事館の位置
さて、日本国籍を持っている方はお世話になることのおおい日本領事館。
場所はこちらです。このエリアの一番北側に位置しています。
最寄り駅は西側のセント・アンドリュー駅ですが、東側のキング駅や少し南に位置するトロントの中央駅・ユニオン駅からも歩いてアクセスできる距離感です。
北側がメインエントランスになっていますが、どの方角からも建物内に入ることができます。
北側の入口にはタワー名が書かれていますのでチェックできます。
住所は77 King westです。
この画像からみて右側。方角では西側のエレベータに乗り33階まで登ります。
エレベータを出ると南側に日本領事館のオフィスがあります。
オフィスは思ったより小さくこじんまりとした雰囲気です。
入口では空港にあるようなセキュリティチェックを受ける必要があります。手荷物は少なめにしておくことをお勧めします。
フレンドリーなセキュリティのおっちゃんから何しに来たのか聞かれ、荷物を置いて手ぶらでゲートをくぐるようにと言われます。
まあ、空港ほど厳重なものではなさそうなので、そんなに心配する必要はないと思います。
まとめ
現在もトロント金融の中心地として重要な役割を果たしているドミニオン・センター。
このビル群がトロントの街並みに与えた影響は計り知れません。
洗練された金融街の雰囲気を醸し出しています。
また、設計時に最後まで粘ったビル群とその隙間のスペースの設け方は見事です。
ランチタイムに訪れるとよく機能している様子を見ることができます。
お昼休憩をしている従業員の方であふれかえっていますが笑
地下街は迷路のようで決して分かりやすい空間とはなっていないのが残念ではありますが、このトロントの気候を考慮して、ビル間を外に出ずに移動できるようになっているのはとても便利です。
コンセプトを維持してくれて本当に感謝ですね。
トロントに滞在している人なら、何かと行く機会もある日本領事館ですが、
実は、近代建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエがかかわった有名建築の中にあることを思い出すと少し見方が変わりますね。
では、今回はこの辺までです。
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今回取り上げた建築の所在地はこちらです。